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2016.04.21交通事故について赤い本別表Ⅱが適用されるような、他覚所見のないむち打ちでも実通院日数は軽視しすぎるべきでない


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先日より、赤い本の傷害慰謝料(別表Ⅱ)の計算基準が改定され、慰謝料計算の場面では実通院日数の重要性は下がったと考えられるという記事をあげていますが、今回は、『慰謝料以外』の場面を考えると、実通院日数が重要になることがある、という記事です。

慰謝料以外で実通院日数が重要になりうる場面としては、大きく2つの場面が考えられます。

それは、後遺障害の認定可能性主婦の休業損害の算定の場面です。

ちなみに、言うまでもないことですが、自分の身体をきちんと治すということを考えた際も、きちんと医師の指示に従って通院を継続することが重要でしょう。


後遺障害の認定を見据えると、整形外科への実通院日数を軽視すべきでない


赤い本別表Ⅱが適用されるような他覚所見のないむち打ちでも、痛みやしびれなどの後遺症が残ってしまう場合があります。

自動車事故の場合には、後遺障害の有無については自賠責保険が第一次的に判断するのが一般的です。

これは私の経験に基づくものですが、自賠責調査事務所では、同じようなむち打ちのケースでも、整形外科に継続して通院している方は後遺障害(14級9号)が認定されやすいのに対し、整形外科にほとんど通院していない人はなかなか後遺症の認定がされていないように思われます。

自賠責調査事務所内部でどのような判断をしているのか明らかではありませんが、症状に応じた治療の継続性等をみているのではないかと推測されます。

裁判所は、後遺障害の有無を判断するにあたって、病院に何日通院したかなどというのは重視していないと思われますが、ただ、自賠責の認定結果だけは重視していますので、「自賠責保険にわかってもらえなくても、裁判官にわかってもらえればいいや」という考えは注意が必要です。

なお、どの程度通院をすべきかというと、ケースバイケースです。

症状に対して不自然なほどに多く通院している場合には、むしろ悪影響をもたらすおそれがありますのでその点も注意が必要です。

医師と相談しながらきちんと通院・治療を受けられることをおすすめします。


主婦の休業損害を計算するにあたって、実通院日数が重要になることも


交通事故のためケガをし、それによって主婦業に支障が生じた場合でも休業損害を請求することが考えられます。

サラリーマンの場合に休業損害を請求するのは比較的簡単です。

職場にいつ休んで、給料を支給しなかったか等を書いてもらえば良いのです(一般的には、勤務先に休業損害証明書を書いてもらって立証します)。

これに対して、主婦の休業損害の算定は悩みどころです。

主婦業は毎日あり、お休みという概念は一般的にありません。

入院していたり重度の受傷をした場合にはその期間100%家事ができませんでした、といえるでしょうし立証は簡単です。

それに対して、赤い本別表Ⅱが適用されるようなむち打ちの事案では、治療期間の全期間にわたって100%家事ができないというのは通常ないでしょう。

最初の1か月間は首などが痛くてほとんど家事をできなかった、2か月目からは少しできるようになった、3か月目からはもうちょっと、と症状が軽快していくに連れて主婦業がこなせる割合も多くなっていくのが一般的です。

病院にきちんと通っていれば、なるほど、それだけ痛かったんだろうなという推測が働くでしょうし、痛いのに我慢して自宅療養をしていた場合には、本当は痛みなんてほとんどなかったんじゃないのと疑いをもたれる危険があります。

症状の程度に応じた病院への通院は、このように痛みとそれによる主婦の休業損害の支障の程度を立証するにあたっても重要な手がかりになることがあります。

自賠責保険なんかはこの実通院日数をかなり重視しているようで、主婦の休業損害につき5700円×実通院日数で算定しているようです。

裁判所は実通院日数にとらわれず、どのような期間、どのような支障が生じたのかという実態を重視する傾向にありますが、それでも、訴える症状の程度に対してあまりにも通院をしていないようであればその主張自体に疑いをもたれる危険があります。

このように、主婦の休業損害の算定にも影響が出てくることがありますので、医師の指示に従ってきちんと通院されることをおすすめします。


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