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  4. 警察への届出は、人身事故扱いにすべきか、物損事故扱いにすべきか

アウル東京法律事務所に所属する弁護士等のブログです。交通事故に関することや事務所全般のお知らせ等があります。

2015.05.15交通事故について警察への届出は、人身事故扱いにすべきか、物損事故扱いにすべきか


まとめると


・通常は、人身事故扱いにすべき。あえて物損事故扱いにするメリットは考え難い

・物損事故扱いにしていても、人身傷害の部分の損害賠償請求は可能

・人身事故の場合→実況見分調書が作成される。記載が詳細で、入手も容易

・物損事故→物件事故報告書(物件見取図)が作成される。実況見分調書より記載は簡略化されており、入手する際も比較的手間がかかる

・判断に迷ったら、弁護士に相談してみてはいかが


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物損事故扱いにするメリットは考え難い


交通事故の被害にあった際、加害者から「お願いですから、人身事故扱いにしないでください」などとお願いされることがあるでしょう。

理由は簡単です。

人身事故は自動車運転過失傷害罪という犯罪であり、また、免停などの行政処分を受ける可能性があるからです。

とくに、行政処分の点は、職業によっては死活問題になりかねませんので、必死でお願いされることもあるでしょう。

加害者としては、物損事故扱いにしてもらうことにより大きなメリットがありますが、被害者にメリットはあるのでしょうか?

残念ながら、物損事故扱いにすることによって、被害者にメリットがあるとは、一般的に考え難いと言わざるを得ません。

このように説明すると、物損事故扱いにする代わりに、過失割合や損害賠償金額を有利にしてもらうことはできないかと考えられる方もいるでしょう。

もちろん、そのような方法も考えられます。加害者が無保険であれば、物損事故扱いにするかわりに、きちんと損害賠償に応じてもらう、というように交渉の材料として用いることもあり得ます。

ただ、たいていの交通事故の加害者は、自動車保険(任意保険)に加入しており、損害賠償の交渉は保険会社(共済)が行うのが一般的です(示談代行というものです)。

保険会社は、加害者のかわりに示談交渉を行いますが、示談金額をいくらにするかというのは、非常に関心があります。

損害賠償金額150万円を100万円に減額できれば、50万円得したことになりますし、反対に、50万円ほど色をつけると、50万円損したことになります。

損益に直結するので、保険会社は、損害賠償金の算定に際しては、非常にシビアなのが一般的です。

これに対して、加害者が刑事処分を受けようが、免停になろうが、保険会社としてはとくに影響はありません。

物損事故扱いにすることに成功すれば、加害者から成功報酬をもらえるという関係にはありません。

そのため、物損事故扱いにするかわりに~と交渉しても、そういう交渉には応じず、「人身事故扱いにされるのは、仕方ないことですね」などとサラリと流されてしまうことが一般的ではないでしょうか。


物損事故扱いでも、ケガなどの損害賠償はしてもらえる


もちろん、警察への届出は物損事故扱いになっていても、人身被害の損害賠償請求は可能です。

警察への届出が物損事故扱いだから、損害賠償請求権が発生しないとか消滅するとかいうことはありません。

交通事故でケガをしたことさえ認めていれば、加害者の保険会社が「物損事故扱いだから、ケガはしていないはずだ」などと手のひらを反すようなことはしないのが一般的です(最初から受傷の有無を争っているケースだと、そのように主張してくる可能性もありますが)。

自賠責保険に請求する際も、人身事故証明書入手不能理由書というものを書けば、保険の支払いに応じてもらえるのが一般的でしょう(自賠責保険は物損に適用はなく、人身事故のみ)。


人身事故扱いにしない(物損事故扱いにする)大きなデメリット


損害賠償請求権の成否に直接影響がないなら、物損事故扱いにしておいても、とくに問題はないのでしょうか。

いいえ、そうとは限りません。

人身事故の場合には、警察は実況見分を行い、実況見分調書を作成します

これに対して、通常、物損事故の場合は、物件事故報告書(物件見取り図)という簡単なものしか作成しません、

実況見分調書は入手が容易ですが、物件事故報告書は入手するために、文書送付嘱託という制度を利用したり、警察署に対して弁護士会照会をしなければ開示してもらえないのが一般的です。

また、物件事故報告書は、実況見分調書より、かなり記載が簡略化されているのが一般的です。

事故状況が争われるようなケースでは、実況見分調書の記載が非常に重視されるケースもあります。

そのため、交通事故でケガをしたような場合には、きちんと人身事故扱いにしておくことをおすすめします。

判断に迷ったら(事故状況が争われやすいケースか否かなど)、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。


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