交通事故損害賠償の知識

  1. 交通事故の弁護士相談「アウル東京法律事務所」
  2. 交通事故 損害賠償の知識
  3. 損害賠償請求権の時効

損害賠償請求権の時効

交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償請求ができますが、この損害賠償請求権にも期間制限があります。その一つが時効です(除斥期間といって、交通事故の発生から20年の期間制限もありますが、こちらはほとんど問題になることはないでしょう)。

消滅時効の期間及び起算点

消滅時効は、民法724条前段に規定があります。法律によれば、1.損害及び、2.加害者を知った時から3年間で時効により消滅することとなります。

1. 損害を知った時はいつか

判例(最判平成14年1月29日・民集56・1・218)によれば、損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう、とされています。ただ、交通事故においては、ケガ→治療開始→症状固定→後遺障害の認定→示談という経過をたどりますが、具体的にいつになるかは、これだけではわかりません。

この点につき、後遺障害による損害については症状固定時から、それ以外の傷害部分(治療費や入通院慰謝料、休業損害など)については事故時を起算点とするという見解もあります。しかしながら、最近の下級審裁判例では、後遺障害による損害のみならず、それ以外の損害を含め、全損害について症状固定時から消滅時効が進行する、と解するものが圧倒的多数を占めている(北河隆之『交通事故損害賠償法』平成23年4月15日・弘文堂・312頁)ようです。もっとも、下級審裁判例の大半が症状固定時から消滅時効が進行する、としていても、それに期待しすぎるのはリスクがあるといわざるを得ません。事故から3年以上経過しそうであれば、後述する時効中断措置をとっておくのが無難でしょう。

2. 加害者を知った時はいつか

判例(最判昭和48年11月16日・民集27・10・1374)によれば、加害者を知った時とは、損害賠償請求が事実上可能な状況の下、 損害賠償請求が可能な程度に加害者を知った時と解されています。具体的には、加害者の住所氏名を確認した時になるでしょう。

消滅時効の中断

法律(民法147条)によれば、(1)請求、(2)差押え、仮差押え又は仮処分、(3)承認があれば、時効は中断するとされています。中断というのは、一時的に停止する、という意味ではありません。いったん0に戻る(リセットされる)という意味です。たとえば、2年6ヶ月経過していても、債務承認がされれば、リセットされて、債務承認がされたときから3年経過してようやく時効が到来することになります。なお、民法147条1号の「請求」とは、単に「支払ってください」と請求することではありません。ここでの「請求」とは裁判上の請求を 意味しますので注意されてください。


トップへ戻る