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2016.07.28交通事故についてプロ野球選手が交通事故にあった場合の逸失利益はおいくら


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逸失利益とは


逸失利益というのは、交通事故のために失うことになってしまった利益のことです。

たとえば交通事故で指を切断する事態になったとします。

プロ野球選手としては致命的な傷害であり、事実上、選手生命は絶たれることになるでしょう。

交通事故にさえあわなければこのような傷害を負うこともなく、プロとして働いて報酬を得られていたはずです。

このように、交通事故のために失った利益(収入)が逸失利益というものです。


プロ野球選手として何年働けたかが問題


逸失利益は一般的に、事故の前年度の年収をもとに計算します。

これが公務員やサラリーマンであれば、定年まで勤めたであろうという推測が働きますので、原則として67歳までの逸失利益の請求が可能です。

これに対してプロ野球選手は身体が資本です。

身体は年齢とともに衰えていくものであり、67歳までプロとして活躍できる人は残念ながらいないでしょう。

いつかは引退するものですので、交通事故さえなければプロとしていつまで働くことができたか、ということを立証しなければなりません。

単純に67歳までプロ野球選手としての逸失利益を請求できるものではありませんので悩みどころとなります。


三庁共同提言では32歳までという例がある


プロ野球選手の逸失利益に関しては、裁判例が見当たりませんでしたが、この点に触れた文献があるのでご紹介します。

「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(三庁共同提言といわれているもの)というものです(判例タイムズ1014号56頁)。

これは、高卒後プロ野球選手となり、その後一軍で活躍している28歳の男性が事故にあった場合を想定しています。

事故の前年度の年収は6000万円と仮定した上で次のように説いています。

「6000万円という高収入は、プロ野球選手だから得られるところ、少なくとも30歳代前半まではプロ野球の選手として活躍できるとものと考えられるから、28歳から32歳までの5年間は年収6000万円を基礎収入とし、その後はプロ野球選手を引退することを前提として何か統計的な数字があればともかく、そうでなければ、全年齢平均賃金を基礎収入として67歳までの逸失利益を算定する」

つまりは、32歳まではプロ野球選手として、その後は引退すると考え、普通の人の収入を基準に67歳までの逸失利益を算定する、というものです。


32歳は一つの例示であり、絶対的な数字ではない


上の提言は、具体的な数字をあげており非常に示唆に富むものではありますが、28歳で一軍で活躍している男性ということを前提としたものにすぎません。

じゃあ、32歳以上のプロ野球選手はプロ野球選手としての逸失利益を認められないかというとそんなことはありません。

たとえば松井秀喜さんは35歳でワールドシリーズMVPを獲得していますし、32歳をこえてもプロの一線級で活躍している選手は多くいます。

プロとしていつまで活躍できたか、ということは人によりさまざまです。

統計などの数字を用いながら、この選手であれば何歳までプロ野球選手として活躍できたか、その立証こそが重要といえるでしょう。


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