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アウル東京法律事務所に所属する弁護士等のブログです。交通事故に関することや事務所全般のお知らせ等があります。

2016.07.11自転車事故について自転車事故(加害者が自転車のケース)には自賠法が適用されない


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自賠法は被害者保護を目的としている


自動車を運行する場合、自賠責保険に加入しなければなりません。

自賠責保険は強制介入であり、加入しないことは許されません。

これは自動車損害賠償保障法(自賠法)5条で定められています。

自賠法は被害者保護を目的の一つとしていますので、被害者にとってはかなりメリットのある制度です。

たとえば、加害者が任意保険に加入していない場合でも自賠責保険から一定の保障を受けられますし、後遺障害の等級認定制度といったものもあります。

これに加え、加害者が違法にも自賠責保険に加入していなかった場合でも、政府保障事業といって自賠責保険と同じような保障を受けることもできます(保障内容はまったく同じというわけではありません)。

このように、自動車事故はその件数の多さや被害の深刻さから加害者に手厚い法制度が設けられているといえるでしょう。


自転車事故には自賠法が適用されないので大変


これに対して、自転車が加害者となっている事故には自賠法が適用されませんので、大変なことになるケースが多いです。


(1)自賠責保険がないのでまったく損害賠償金を回収できないケースも

第一に、自賠責保険がないのでまったく損害賠償金を回収できないおそれがあります。

自動車事故であれば自賠責保険があるので、仮に相手方が任意保険に加入していなくても傷害部分については最大120万円までが保障されます(後遺障害が認定されればそれにプラスアルファが保障されます)。

(また、自賠責保険は物損には適用されないので注意が必要です)

これに対して、自転車事故の場合にはこのような最低限の保障はありません。

日本の法律ではお金(資産)がある人からであれば強制的にお金を払わせることができますが、お金(資産)がない人からお金を取ることはできません。

(刑罰としての罰金であれば、払えなければ労役上留置といって「働いてお金を返せ」という制度も存在しますが、民事事件ではそれもできません)

そのため苦労して訴訟をして勝訴したは良いものの、お金は一切回収できず徒労に終わるということもあり得ます。


(2)後遺障害の等級認定制度がない

自動車事故であれば、後遺障害が残った場合、自賠責保険のほうでどの程度の後遺障害が残存しているか、それが何級相当の後遺障害かといったことを判断してくれますので、後遺障害が残った場合でも話はスムーズに進むことが多いです。

裁判所も自賠責保険の認定を尊重する傾向にありますので、自賠責保険が認定した等級を前提とする限り、後遺障害の立証において、被害者側の負担はそれほど大きくありません。

これに対して、自転車事故ではこのような後遺障害の等級認定がないので、加害者側は後遺障害の存在をとりあえず争ってくることが多いです(保険会社が対応しているケースでも)。

そのため、自動車事故であれば訴訟までは必要なかったケースでも自転車事故だと訴訟をせざるを得なくなり、その分被害者の負担が大きくなるケースが多いです。


被害者側が苦労をするからといって、任意保険に入らないでも良いというものではない


このように、自転車事故の被害者はかなりの負担を強いられますが、だからといって「被害者がそんな大変なんだったら保険に入らなくてもいいや」と思ってはいけません。

単に被害者の負担が大きいというだけであって、加害者が不誠実な対応をしているならば訴訟提起していくケースは少なくありません。

また、お金がないから回収できないといっても、やろうと思えば給与差押えといって、加害者のお給料の一部を差し押さえて回収することもできます。

さらに、加害者が裁判に負けた時点ではお金を持っていなくても、将来ある程度のお金や財産を形成していけば、その段階で再度強制執行にうつることもあります。

自転車事故でも損害賠償額が100万円をこえるようなケースは珍しくありません。

自転車を運転する人は『自分や家族を守るためにも』きちんと保険に加入しておきましょう。


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