交通事故損害賠償の知識

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  2. 交通事故 損害賠償の知識
  3. 障害が残った部位に応じた後遺障害
  4. せき髄の後遺障害(脊髄損傷)

障害が残った部位に応じた後遺障害

せき髄の後遺障害(脊髄損傷)


脊髄損傷とは、主として、脊柱に強い外的圧力が加わることにより(たとえば交通事故)、脊椎を損壊し、脊髄に損傷を受けることを言います。
脊椎とは、背骨のことです。脊髄とは、背骨の中に入っている神経のたばの事です。

1.せき髄損傷の症状

せき髄は、人間の体の中でも、中枢神経系という極めて重要な器官です。
しかも、末梢神経と違って、損傷されると修復・再生することはないため、重大な後遺症をもたらすことがあります。
(だからこそ、iPS細胞などによる再生医療が待望されています)
せき髄損傷による症状としては、一般的にイメージされやすい、麻痺のほかに、様々な症状があります。

・局所症状
→ある部分にだけ痛みを感じたり(疼痛)、変形が生じたり、動かせる範囲が狭くなったりする(可動域制限)ことがあります。

・麻痺
→麻痺には、完全麻痺と不完全麻痺とに分類できます。完全麻痺の場合は、運動機能と知覚機能が失われます。
 頸髄損傷の場合には四肢(手足)の麻痺が、胸腰髄損傷の場合には、両足(対麻痺)が起こりえます。

・循環障害
→心臓から身体全体に血液を送り出す機能自体は問題ないのですが、身体から心臓に戻る血流に大きな影響を与えたり、血圧が低下したりします。
 動脈は、神経系により太さを調節されています(細くなると血圧が上がり、太くなると血圧が下がります)。
 そうすると、せき髄損傷により、動脈の太さを調節できなくなった結果、血圧が常に低いままになることがあります。
 結果、血液がうまく心臓に戻れず、一つの部位にたまって、腫れたりすることがあるので注意が必要です。

・呼吸障害
→横隔膜は、頸髄節に神経支配があります。
 頸髄損傷を受けると、呼吸障害を生じ、人工呼吸が必要になることもあります。

・膀胱直腸障害
→麻痺の結果、排尿機能に障害をもたらすことが多くあります。
 そのため、カテーテルを使用する等して排尿することになるのですが、カテーテルを通して雑菌が侵入することもあり、注意が必要です。


2.認定され得る後遺障害等級


後遺障害等級は、1級~12級が認定される可能性があります。
以下、詳しく解説していきます。

・「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」1級1号(別表第一)
→具体的には、以下の4パターンが該当します。

(1)高度の四肢麻痺が認められるもの
(2)高度の対麻痺(両肢の麻痺)が認められるもの
(3)中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(4)中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

※麻痺の程度について、高度・中程度・軽度という用語についてはこちらの解説をご覧ください。

・「せき髄症状のため、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもの」2級1号(別表第一)
→具体的には、以下の3パターンが該当します。

(1)中等度の四肢麻痺が認められるもの
(2)軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
(3)中等度の対麻痺であって。食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

・「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの」3級3号
→具体的には、以下の2パターンが該当します。

(1)軽度の四肢麻痺が認められるもの
(2)中等度の対麻痺が認められるもの

・せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」5級2号
→具体的には、以下の2パターンが該当します。

(1)軽度の対麻痺が認められるもの
(2)一下肢の高度の単麻痺が認められるもの

・「せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」7級4号
→具体的には、一下肢の中等度の単麻痺が認められるものが該当します。

・「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」9級10号
→具体的には、一下肢の軽度の単麻痺が認められるものが該当します。

・「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の傷害を残すもの」12級13号
→具体的には、以下の2パターンが該当します。

(1)運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
(2)運動障害は認められないものの広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

3.麻痺の程度に関する解説

麻痺の程度について、高度の麻痺、中等度の麻痺、軽度の麻痺がありますが、それぞれ、以下のような意味です。

(1)高度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作ができないこと
(基本動作とは、上肢の場合は物を持ち上げて移動させること、下肢の場合は歩行や立位ができないことを意味します)

具体例として以下のようなものがあります。

(a)完全硬直またはこれに近いもの
(b)上肢の三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態
(c)下肢の三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができもの又はこれに近い状態
(d)上司の、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの
(e)下肢の、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの

(2)中等度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作にかなりの制限があるもの

具体例としては、以下のようなものがあります。

(a)障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(おおむね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの
(b)障害を残した一下肢を有するため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であること

(3)軽度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているもの

具体例としては、以下のようなものがあります。

(a)障害を残した一上肢では、文字を書くことに困難を伴うもの
(b)日常生活は概ね独歩できるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で横転しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの

4.せき髄損傷の検査・立証方法

せき髄は、それぞれ、身体に対応する部位があります。
(第一頸髄~第四頸髄は頸部、第四頸髄~第八頸髄は肩といった具合に神経の支配領域が対応しています)
麻痺が生じている場合には、この麻痺が生じている部位と、損傷があったせき髄とが一致している必要があります。
そこで、MRIやCT等でせき髄の状況を撮影したり(脊髄をいわば輪切りにして撮影するので、せき髄がどうなっているのか画像でわかります)、医師の身体的所見による裏付けが必要となります。

しかしながら、せき髄損傷の事案に置いては、脊椎の骨折・脱臼などの骨傷が明らかでなく、MRIやCTで見ても、せき髄損傷の状況が明らかとはいえないような場合もあります。

このような場合には、事故の態様、症状の内容や範囲、既往症が損する場合にはその内容等も判断要素となりえます。

保険会社は、せき髄の不全損傷のケースでは、大きく争ってくることがありますので注意が必要です。

保険会社との交渉で困ったことがあったら、まずは弁護士への相談をご検討ください。
アウル東京法律事務所では、交通事故の被害に関するご相談は無料でお受けしておりますので、安心してご相談ください。


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