交通事故損害賠償の知識

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  3. 障害が残った部位に応じた後遺障害
  4. 脊柱の変形障害(交通事故に伴う後遺障害の解説)

障害が残った部位に応じた後遺障害

脊柱の変形障害(交通事故に伴う後遺障害の解説)


1.認定されうる後遺障害等級


6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの
8級相当:脊柱に中程度の変形を残すもの
11級7号:脊柱に変形を残すもの


2.脊柱(せき柱)とは


後遺障害の認定上、脊柱とは、頚椎、胸椎及び腰椎を指します。

解剖学上は、仙骨及び尾骨は、脊柱の一部とされているようですが、後遺障害の等級表上の脊柱の障害とは、頸部及び体幹の支持機能や保持機能、運動機能といったものに着目したものです。

そのため、これらの機能を有しない、仙骨と尾骨については、『脊柱』には含まれませんので、注意してください。


3.脊柱に著しい変形を残すものとは(6級5号の認定要件)


脊柱に著しい変形を残すものとして認定されるのは、以下の2つのパターンがありますが、いずれもX線写真、CT画像またはMRI画像で、脊椎圧迫骨折または脱臼等が確認されることが必要です。


(1)脊椎圧迫骨折等により、2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの

前方椎体というのは、椎体のお腹側のことです。後方椎体は、背中側のことです。

椎体のお腹側だけ高さが低くなると、背中が曲がってしまいます。2個以上の椎体について、前方椎体高が著しく減少している場合には、6級5号と認定され得ます。

前方椎体高の著しい減少とは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少をした椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上となっているものを意味します。


(2)脊椎圧迫骨折等により、1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じている+コブ法による側彎度が50度以上となっているもの

ここでいう、前方椎体高の減少とは、少しだけ減少している場合は含みません。

減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上である場合を意味します。

側彎とは、背骨が右か左のどちらか片方に曲がってしまったことを意味します(通常は、まっすぐです)。

側彎の程度については、コブ法という測定方法を用います。

コブ法とは、X線写真で、脊柱のうち、頭側で最も傾いている脊椎の椎体上縁の延長戦と、尾側(おしり側)で最も傾いている脊椎の椎体の下縁の延長戦が交わる角度を測定する方法です。

後遺症認定のためには、コブ法で測定した側彎度が50度以上となっていることが必要です。


3.脊柱に中程度の変形を残すものとは(8級相当の認定要件)


脊柱に中程度の変形を残すものとして認定されるのは、以下の3つのパターンがあります。

いずれも、6級の場合と同様、X線写真等で、脊椎圧迫骨折等が確認できる場合であることが必要なので注意してください。


(1)脊椎圧迫骨折等により、1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの

6級が認定される(2)のパターンのうち、コブ法による側彎度が50度未満である場合です。

要は、コブ法による側彎度が50度以上の場合は6級だけど、側弯が生じていない場合や生じていても、50度未満の場合には、8級となるというわけです。


(2)コブ法による側彎度が50度以上であるもの

後彎の有無は問わず、コブ法で測定した側彎度が、50度以上の場合には、8級と認定されます。


(3)環椎または軸椎の変形・固定

環椎(第一頚椎のこと)または軸椎(第二頚椎のこと)が変形した場合や、固定術が行われた場合で、かつ、以下の(a)~(c)のいずれかに該当する場合には、8級と認定されます。

※ただし、(a)と(b)については、軸椎以下の脊柱を動かさず、被害者にとって自然な肢位で、回旋位または屈曲・伸展位をの角度を測定します。

(a)60度以上の回旋位となっているもの

(b)50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位なっているもの

(c)側屈位となっており、X写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの


なお、環椎または軸椎は、頚椎全体の可動範囲の相当の割合を担う重要部分です。

そのため、環椎または軸椎の固定術が行われると、頚椎全体の可動範囲も大きく制限され、「脊柱の運動障害(8級2号)」にも該当するケースがほとんどなので、見逃さないよう注意が必要です。


4.脊柱に変形を残すものとは(11級7号の認定要件)


次のどれか一つに当てはまる場合に、11級として認定されます。

(1)脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの

(2)脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずかの脊椎に吸収されたものを除く)

(3)3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの


5.できるだけ早くMRI検査を


脊柱の圧迫骨折等は、骨折が軽微な場合には、初診時に見落とされてしまう場合があります。

後々、圧迫骨折等が発見された場合には、交通事故との因果関係をめぐって争いになることがあります。
(保険会社側としては、圧迫骨折なんてしていないと争ったり、交通事故が原因ではないと主張するおそれがあります)

とくに、レントゲンでは確認できなかった骨折等が、MRI検査を受けることにより発見されるということもありますので、交通事故の被害にあったら、レントゲンでは異常が確認できなくとも、できるだけ早期にMRI検査を受けるべきでしょう。


6.逸失利益を争われるおそれがあるが、最初から諦める必要はない


脊柱の変形障害は認められるものの、運動障害はないような場合、保険会社側としては、労働能力に影響はないので、逸失利益は存在しないとして争ってくる傾向にあるように思われます。

たしかに、裁判例の中には、逸失利益を否定したものもありますが、保険会社からそう言われたからといって、最初から諦めるべきではありません。

逸失利益を認定した裁判例も数多くあります。

保険会社からの示談提案を受け入れる前に、まずは、弁護士への相談等をご検討ください。

アウル東京法律事務所では、交通事故の被害に関する相談は無料です。お気軽にご相談ください。


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